まだ価値がないもの。価値があるのかないのかわからないもの。この先価値が上がるかどうかも定かでないもの。



"イタイさんからボンバージャケットの制作の依頼を受けた。

正直ボンバージャケットなんて、中学2年生のときに着ていたトミーフィルフィガー以来着ておらず、何故ボンバーから離れていたのかを考えてみることにした。

ラフシモンズのボンバーだって、バレンシアガのボンバーだってめっちゃ好きだし店頭で袖を通す事をしたがどうにもこうにもしっくりこない。僕は顔が濃く身体も大きいから、ボンバージャケットを着ると本物感が出てしまい、洒落になってくれない。

ファッションには幾分、着こなし成分にフェイクな要素が必要なのである。そうでなければ自分の手元に落ちてくれない。だから、荒々しくかっこいい本格的なボンバーではなく、少し上品で可愛らしくて偽物のそれを作ろうと手を進めることにした。

ヴィンテージのパターンを取り、アレンジメントするのは僕の仕事じゃないような気がするし、それなら普通にヴィンテージのそれの方がかっこいいしコスパもいいんじゃないだろうかと思う。だから、手探りで予想のつかない結果を待つ方法が幾分自分らしいし今出来る最良の選択だと考えた。

Nip in the Airという店名らしく、ド直球なのに掴みどころのなく、どこが自虐的でもある語感がとてもイタイくんらしい。僕自身も大切にしてるテーマなのでどこか日本的な要素を極力分かりにくい形で忍ばせることを考えてみた。

そこで、一枚の平らな布を衣類に仕立て着流すようなイメージで、平面での製図ではなくドレーピングでボンバージャケットに見えるように無理矢理形を造形していくという方法を取った。

ダブルフェイス のウールカシミアの繊細な生地は光沢があり、誰がどう見ても美しい。ボンディングでなく接結タイプの生地は地縫い以外は全て手縫いでステッチが表に出ず、ドレープの邪魔をしないから、面倒だらけだし高価だけどそれを採用した。

経年変化により削れてボロボロになったプラスチックのキーホルダーが個人的に好きなので、そういうイメージで全体のディテールを考えていった。失敗した3Dプリンタみたいな感じ。だから、表面にはなるべくMA-1の要素を排除しながら機能としては残しておく。

イタイくんから、明太子パスタじゃない和風パスタってワードが以前頂いた記憶があって、出汁の取り方とか食べ方は日本的だけど、乳化の作用や唐辛子の使い方や具材は本場のそれを踏襲してるような調理をイメージしている。東洋人として、ファッションデザインを考えるのは本番のヨーロッパでないから、フュージョン料理を作るが如くアレンジメントを加えるという、作り手としての個人的な趣味嗜好がある。

だから、今回は、ドレーピングでやっている事と、ダブルフェイス を使用している事を充分に活かす方法を3つ仕込んでフュージョン料理してみた。

中綿を使わずにボリュームを出すため、前身頃に隠しポケット付きの大きなタックを配置した。本来あるはずの物がそこに無いけど実はあるよという反・反転が起こり、しかもそこに手を突っ込むことが出来るという発想は、日常のポケットに手を突っ込むという行為を強く意識させてくれて非常に気持ちの良い。

左袖のシガレットポケットもパッチではなく、シームポケットにした。ダブルフェイス で中綿がないので中の空間を自由に使える。前身頃のポケットもだが、中の空間を使うというのは着物に通ずる部分としても意識した。

男性的なアイテムへのツイストとしてポケットの大きさは女性器、通称くぱぁな感じになるようにステッチの幅や布袋の大きさ、配置を調整するのに何度も実験をして苦労した。少し引っ張るとティッシュのようになるのは自慰行為を彷彿させるのではないかと、あえてティッシュに見立てて生成りのシーチングで作成したが、あからさますぎたので共生地にした。

ボンバーの首リブ部分をリブを使わずに再現する必要があった。普通に同じ仕様で、リブに見立てて生地を配してみたものの、全体の設計が形骸化されたMA-1のような物なのにも関わらず、首周りだけ妙に本物に近いととってつけたような違和感を感じてしまう。それでは味がバラけてしまう。だから、前身頃から後ろ身頃にまで伸ばしてダーツでシームが途中で消えてしまったような見た目にしてみた。着物の前立てのような立ち方になったのは一枚の布で仕立てたからだろうか。

騙し絵のようになっていて、好きなディテールが仕上がった。

以上が今回の制作ノートです。

手探りでやったおかげで問題に当たり、問題を解決する方法にトライすることで新しいテクニックを幾つか発見出来ました。なので僕にしか出来ないデザインになったと思います。

まだ問題をいくつか抱えているのと、フードが手付かずなので火曜日までになんとか!"




まだ価値がないもの。価値があるのかないのかわからないもの。この先価値が上がるかどうかも定かでないもの。

民藝的な視点で価値の再発見を問う箱としてスタートしたニップ イン ジ エアー。その感覚を象徴するようなアイテムを作ってもらった。納品される前に、メモにしては長すぎる制作ノートが送られてきた。この手紙のようなノートはそのまま使いたい。

ダブルフェイスのウール / カシミア生地を用いたブルゾン。平面をドレーピングで無理やり曲線にしたような、一枚の布に通ずる原始的な服作り。

個人的な80年代UKオマージュで、性的なモチーフを形骸化してもらうというお題を投げたところ、見事なくぱぁポケットと、タマタマシルエットの素敵なブルゾンが届いた。ミッドナイトというフォーマルなカラーがこのくだらない企画をアンビエントにしてくれる。









Nip Being Blouson - W Face Wool Cashmere, Midnight by Osaka Artisan.


毎回届くたびに仕上がりが違うのが面白い。勝手にアップデートして送られてくる。こういう生き物みたいな服のやり取りも、若手のワイン生産者みたいで面白いなって思いました。

まだ価値がないもの。価値があるのかないのかわからないもの。この先価値が上がるかどうかも定かでないもの。自分が積み上げてきた美的感覚だったり直観だったりを信じることでしか購入に踏み切れない、そんな曖昧なものをたくさん集めていこうかと思います。

イタイ


NP-1と重ねてライナーみたいにすると、とても気持ちが良くなります。

現在、~ 12/31(水)の期間の予約を解放しております。今月は12/17(水),18(木)はお休みをいただいております。

ご訪問希望は、お日にち、お名前、人数、お電話番号を明記の上、LINE、DMもしくはarigatou@nipintheair.comまでご連絡ください。住所は渋谷区神宮前になります。ご連絡をいただいたのち、詳細な住所をお送りいたします。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

ニップ イン ジ エアー 

東京都渋谷区神宮前 

11:00 ~ 20:00

Instagram: https://www.instagram.com/nipintheair507/

Line: https://lin.ee/dO8pqAI

E-mail: arigatou@nipintheair.com