イントロダクション


みて しりそ しりて なみそ 


民藝運動の第一人者、柳宗悦は西洋の宗教哲学、美術に若い頃から傾倒し、朝鮮工芸との出会いを経て、民族固有の造形美というものに惹かれていくようになった。民藝 = 民衆的工芸にその健康的な美しさが宿る、ということに生涯をかけてその保全、価値向上に努めた。

ニップ イン ジ エアーの基礎となるのは、この民藝に根ざした価値観であり、普段の生活で顕在的に意識していない民族固有の空気感を表出すること、また、有名無名問わず人間の本来持つ直観や、民族の生活様式 、風土から生み出される所作や習慣の美を見つめ直すこと、を目的としている。


さて、改めて。入社当初から考えていた自分の空間を作ること。やはり服屋に育てられた人生だったので、服屋として生活がしたい。そういう思いを持ちながら神戸・Mukta / Salでバイイングや企画の経験を積んだのち、縁もゆかりもない東京の地でニップ イン ジ エアーを作りました。


取り扱うのは、日本的(=Nip)なもの。

UKパンク、ポストパンクカルチャー、フランスやイタリア、アントワープのクチュールやモードの歴史、デトロイトやロンドンのアンダーグラウンドシーン、コムデギャルソンやヨウジヤマモト、挙げ出せばもちろんキリがないですが、若い頃からオタクと言っていいほどファッションと、ファッションに付随してその周辺のカルチャーにどっぷり肩まで浸かってきました。そして、半年に一度のバイイングや数えきれないほどの企画を神戸ではおこなってきました。

その中で、どうして海外のものはカッコよく見えて、近くにあるものはカッコよく見えないことが多いのだろうと疑問に思うことが多々ありました。また、日本は各都道府県に1軒どころではない数の素敵な服屋が文字通り軒を連ねるような異常な国なのに、なぜそこでは自分が思う日本的なものが置いていないんだろう、と。

決して、日本のものづくりが最高だとか、国産のものしか買いたくないとか、コメしか食べないとか、もちろん日本ファーストだとか、そういう思想ではなく、自分自身をもっと俯瞰的に見つめる際、自己の抽象化の過程で、日本人の民族性や、ふだんの生活で意識しない日本的なムードだけはアイデンティティから切り離せないな、ということに気がついた、ただそれだけのことです。

自分が思う日本像は、いわゆる'Japan'でも、愛国的な'ニッポン'でも、清廉な'にほん'、でもなく、ニポン。よくないですか?ニポン。僕は民藝やそのカルチャーにそのニポン的なものをかんじました。ニップとは、その略称です。また、Nip in the Airという名前は、英国の詩人であり、希望と皮肉の詩を得意とするジョン・ベッチマンの詩集から取りました。


ここでは、洋服にブランドタグがついていません。不親切だな、と思ってはいるんですが、視覚的な文字情報よりも、造形や素材、その服が持つ空気感を繊細に受け取ってほしいと思っているので、全てのブランドタグを外しています。海外の文化にどっぷりと影響を受けた日本人の服と、日本の文化に影響を受けた海外の人の服の中から、自分がNipだと思ったものを揃えていますが、これらの人々が作った服はネームタグがついていなくとも、その人たちの服と分かるオーラを持っています。



当面は予約制で運営します。ご訪問を希望される場合はInstagramよりDMか、arigatou@nipintheair.comまでご連絡ください。定休日は基本ありません。ご希望の日時をお知らせください。

それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

イタイ